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「じゃ、俺は先に帰るな」
「一緒に、」
「いーの、邪魔しちゃあれだし。俺も用事あるからさ」
じゃあな、と止める間もなく裕二が出ていった。
気を遣わせてるだろうかと一つ息を吐いて、日向の傍へ。
「ひな、」
「……ん……?」
「帰るぞ」
「うん……」
目を擦りながら、もそもそと身体を起こした。
まだ眠いのか、とろん、とした目をしている。
裕二の言葉を思い出した。
『……大切にしなよ』
大切にできているだろうか。
傷つけてばかりなのかもしれない。
「ゆ、う……?」
首を傾げてくる日向が、愛おしくて。
髪を撫でて、手を滑らせる。
耳へ、頬へと動かして、
「……ん、」
ただ、唇を重ねた。
重ねるだけの、短いそれ。
「……な、なに……?」
突然のそれに、日向が戸惑っているのがわかった。
普段、部屋ならともかく学校じゃ、こいびとらしいことはしないから。
頬が微かに赤くなっていた。
「可愛いなぁと思って」
「……どうしたの、急に」
……そんなに俺がこういうことをするのが珍しいのか、訝しそうな顔をしている。
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