4
 

「いやだ」



嫌だ、嫌だ、嫌だ。
和泉が行ってしまうなんて、嫌だ。



「僕と遊ぼうって、行った」
「行った」
「行かないで」
「俺は行くよ」
「駄目」
「仕方が無いんだ」
「どうして」

「だってもう、俺は子どもではないから」



さわ、と風が吹いた。
夜の静謐が揺れた。

淡い桃色の花弁が、風に乗った。
桜が散って、空に舞って、季節が変わる。

夜明けはまだ来ない。
だってほら、まだ少しで日付が変わるような時間だ。
太陽はまだ眠ってる。

どうして、和泉は立ち上がるの。



「行かないで」



どうして僕は、泣いてるの。

楽しかったの。
行かないで欲しいの。
名前を呼んで欲しいの。

呼べば、食べなくてはいけないから。
呼ばないでと願いながら、名前を呼べと言い続けた。

その声に、優しく甘いその声に、ずっと呼ばれてみたかった。

でも、ほら、もう、日付が変わる。
和泉が大人になってしまう。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -