3
春が来て、夏が来た。
やがて秋が来て、冬が来た。
何度も季節が巡って、和泉はぐんと大きくなった。
僕のもとにやってくる回数も少なくなった。
身体の傷は相変わらずだったけれど。
ガリガリと痩せた身体は相変わらずだったけれど。
僕よりも大きくなった背と、広くなった背中。
ひょろりとした風貌で、僕と夜明けを待った。
「あんた、歳を取らないんだな」
「僕は神様だからね。和泉は、どんどん歳を取るね」
ほら、早く名前を呼ばなくちゃ。
和泉、早く、僕の名前を呼んで。
僕と遊べる時間はもう少ししかない。
和泉が大人になってしまう前に。
大人になったら遊べない。
僕の名前を、その甘い声で、呼んで。
「明日、ここを出る」
出会った頃よりも随分低い、けれど甘さは変わらない声で、和泉は行った。
「そういう約束だった。十八になったら、家を出て行くって」
「出て行く」
「もう、ここには来ないよ」
ふわ、と頭を撫でられた。
僕と比べなくてもわかる、とっても大きくなってしまった手は、燃えるように熱い。
僕が冷たいから、熱いなぁって、思うんだ。
僕が、人間じゃないから。
だから、和泉は行ってしまうの?
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