3
少年はしきりに俺のことを「かみさま」と呼んだ。
「僕を、殺しにきてくれたんでしょ」
意識の無かった時、俺が看病をしたことを少年は知らない。
「はい、どーぞ。かみさま」
俺は神様でもなければ、死神でもない。
そう呼ばれる理由もないし、俺は、少年を殺せない。
「シキ」
「しき?」
「俺の名前」
人殺し仲間にも恐れられたほど、精力的に活動してた俺は、『会えば死期が近づく』と言われ続けた。
それがきっかけで、この名前を使うようになっていた。
本名は、もう、忘れた。
「しき」
「そう」
「……巡る、なまえだね」
少年は、ぽつりとそう言った。
巡る、名前。
四季。
いつだって死に近い俺は、巡る季節に相応しくない。
「きれいな、なまえ」
綺麗な顔をした少年は、ふわりと、笑った。
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