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ぐ、と片手で少年の首を絞めた。
少年は驚いた様子もなく、目を細めて俺をじっと見ていた。
お前に、何がわかる。
「二度と、そういうことを言うな。口を開くな。二度と、俺に、言うな」
憎しみを乗せた声は、何故か震えていた。
少年は無表情のまま、目を閉じた。
「うん」
無垢な返事。
はっとして、手を離した。
少年は力が抜けたように、ベッドに沈んだ。
「あ……」
俺は、こいつを殺そうとした。
こいつは、俺の片手ですぐに死ぬ。
自分の手が恐ろしかった。
思わず自分の右手を殴った。
「この、手がっ……」
人を殺すのは、構わなかった。
この少年を殺すのは、恐ろしかった。
「かみさま、」
少年はこてんと顔を横に向けて、俺を見ていた。
「かみさまも、泣くの」
甘い、声だった。
「かみさまは、優しいね」
死ぬことができなかった少年は、残念そうに言うのだ。
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