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人を殺して生きてきた。

人を殺すのは息をすることと同じだった。
戦わなければ生きていけなかった。

拳を振り上げてきた父親も。
口うるさく責める母親も。

戦わなければ、死ぬ。



殺して、殺して、殺して。
俺は逃げて、殺しては、逃げて。

気付いたら、何年も経っていた。
殺さなければ生きられなくなっていた。

そうしないと、生きた心地がしなかった。




ふらりと立ち寄った住宅地。
今は何月何日の何時かもわからなければ、ここがどの地域かもわからない。
俺にあるのは、人を殺したいという意思。

小さなアパートがあった。
人が住んでいるかもわからない、静かなアパートだった。

二階の端にある部屋に入る。
ドアの鍵は開いていた。
不用心だが、実際こういった寂れたアパートには、珍しくない。
盗られるほど高価なものもない証拠だ。

部屋は薄暗かった。

盗られるほど、高価なものは、ない。
不用心だと言われても、守りたいものは、ない。
守られるべき、人の命も。



不用心なその部屋に、たった一つの、息使いがあった。



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