3
抱き締めてしまえば、壊れてしまいそうだった。
硝子のように脆い身体に、恐れていた。
気が付いたら、目を瞑ったその一瞬で、消えてしまいそうで。
「し、き」
少年は甘い声で、俺の名を呼ぶのだ。
「だい、じょうぶ、だよ」
俺に身体の隅々を触られ、息を荒くしながらも、少年は微笑む。
「ぼくは、どこにも、いかないよ」
存在を確かめる儀式。
この手に、その熱さを残したい。
「しき、」
少年は、俺をかみさまを言った。
救いや解放や許しを求める、その存在がそれであるのなら。
「……うるせぇ」
俺はこの小さな子に、祈りのような願いをのせるのだ。
気付かれたくないから、悪態をつく。
くすくすと笑う少年には、すべてお見通しだ。
かみさまは、全知全能なのだ。
「ばか」
「……誰が馬鹿だ」
月明かりだけが、眩しかった。
影に怯えた夜が、今はこんなにも、優しかった。
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