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優しい少年は、いつも死んだように眠っていた。
「……ん……」
もともとの存在感の希薄さや、身体の線の細さもあっただろう。
少年はいつだって静かに眠るから、俺は落ち着かなくなる。
誰かを殺さないと生きていけなかった俺が。
最も殺すのを恐れている人間。
「………」
この家にはベッドが一つしかない。
床で雑魚寝をしようとした俺に、少年はベッドで寝る事を許した。
隣にある小さな身体に、いつも落ち着かない。
「おい」
真夜中、思わず声をかける。
蹲るように丸まった小さな身体は、ぴくりとも動かない。
もしかして、死んでしまった?
呼吸が止まってしまった?
ゆす、と身体を揺すると、大きな目を縁取る長いまつげがぴくりと動いた。
「し、き……?」
良かった、生きている。
この子はまだ、温かい。
思わず抱き締めた。
腕の中に温かさを感じた。
こうして毎晩、俺は少年の温かさを確認した。
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