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面倒くさいと思えばそう言えなくもないけれど、愛しいと思うのもまた事実。
(……こいつはほんとに……)
綾が笑って寝室に戻ったのは数分前のこと。
泣きそうなのをこらえたそれだということは、すぐにわかった。
さすがに朝倉と葵も察したようで、もとより泊まるつもりはなかったようだから、さっさと帰ってしまった。
酒の回っていた頭も冴えて、寝室に向かった。
ベッドの上。
綾は布団にくるまって、蹲っていて。
「綾」
「………」
話しかけても、寝たフリ。
きゅ、と布団を掴む力が強まったのがわかって、しっかり起きているのもバレバレだ。
「寝てんなら布団捲ってもいいか」
独り言のように宣言してやり、布団を掴むけれど、案の定それは動かない。
「……起きてんじゃねーか」
「う、うーっ」
顔は見せたくないらしく、布団を掴んで離してくれない。
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