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「ふ、ぇっ……ひ、う、っ……」
「ちな……?」
ぽろぽろ、と静かに泣きだす様子に、はっとする。
頭の霞みが晴れていき、冷えていく。
千夏を、傷つけた。
その事実だけが、残った。
「ちな、」
「やっ……やだ、も、こわ、こわい、やっ……!」
泣いて、俺に怯えた。
十分に動かない身体を必死に動かして、俺の腕の下から逃げ出そうとする。
「ちなっ」
「やぁーっ!」
慌てて抱き締めるけれど、精一杯の力で突っぱねられた。
ばた、と暴れてしまう。
「ちな、ごめん、怖がらせた」
「や、こわい、」
「ごめん、もうしない……」
小さなこの子を、傷つけた。
自分の嫉妬だけで、傷つけた。
伝われ、と頭を撫でた。
額や頬にキスを落とし、千夏が落ち着くように背中を撫でた。
息の荒かった千夏は、次第に呼吸を取り戻した。
「ゆ、じ……」
「うん」
「こわ、かった、ごめ、なさい、僕が、わるいこ、だったから」
「千夏は悪くない、俺が、悪い」
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