1
ほわ、と千夏の表情が和らぐのがわかった。
「かわい、」
千夏がソファに座る俺の脚の間に座り、観ているのはテレビ。
動物番組に出ている子犬に、小さな声が上がった。
「いぬ?」
「ん、それは犬」
「ちいさい」
「まだ子どもだから」
そういえば千夏は、あまり動物と触れ合ったことがない。
テレビで観ることも少なかったんじゃないだろうか。
「うさぎ!」
「ん、うさぎな」
「耳が、ぴょんぴょんって」
声こそは大きくないものの、テンションが上がっているのがわかる。
きらきらとしている目で、テレビをじっと見ているものだから。
その姿は、微笑ましくて、可愛くて。
こんなに密着しているのに。
こんなに近くにいるのに。
まるで、俺は置いてけぼり。
いつか動物飼いたいとか言いだすんじゃないだろうか。
そしたらきっと、千夏はそっちにお熱だ。
(いや、テレビに嫉妬とか、ねーだろ……)
けれど、千夏は全くこちらを見てくれないから。
する、と千夏の服の中に手を差し込んだ。
前へ top 次へ