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side.航



奈津の行きつけの病院に駆け込んだ。
俺とも顔見知りの医者は、多少慌てながらも慣れた手つきで、奈津の介抱をした。

肺炎ぎりぎりの、高熱だった。
入院ということになり、満月先生も駆け付けた。



初めて、人に頭を下げた。
奈津の親代わりである満月先生は俺とも付き合いが長く、けれど責めたりしなかった。
それほど奈津が俺のことを慕っていると、知っていたからだ。
向こう見ずで、一生懸命すぎる奈津のことを、知っていたからだった。

せめて、目が覚めるまで一緒にいてやってくれと、頼まれた。
下げた頭は、上げられなかった。



もう早朝とも言える時間になって、けれど奈津の傍を離れられなかった。
蒼白な顔で眠る奈津は、まるで死んでいるようだった。
小さな手を握りしめることしか、出来なかった。

馬鹿なことをしたと思った。
さっさと離してやれば良かったと思った。

離せなかったのは俺のほうで、奈津に甘えて、放っておいた。
きっと俺から離れるはずがないと、自惚れていた。



「……こ、う……」



小さな寝言に、胸が締め付けられた。



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