6
 

side.航



約束は、駅前の公園だった。
雨は相変わらず止んでいなかった。

濡れることにも構わず、バイクを走らせた。
夜中の公園はぼんやりと、街灯だけが光っていた。



(っ……いた)



誰もいない公園に、ぽつりと一つだけ、ベンチに座る影があった。
ベンチに蹲っているその姿は、顔は見えなかったけれど、奈津だと分かった。



「なっ、」



声をかけようとして、ぞっとした。
蹲っている奈津は、ぜぇぜぇと肩で息をしていた。
近付いてきた俺の足音にも、気付いていなかった。



「奈津っ」



肩を揺すると、ふらりと身体が傾いた。
身体は恐ろしいほど、冷たかった。
蒼白になった顔で、少しだけ、目が開いた。



「こ、う……?」
「もういい、喋るな」



ひどい熱だった。
身体の弱い奈津が長時間雨に打たれていれば、どうなるかはわからないはずがない。
小さな身体を抱えあげようとすると、きゅっと、首に腕を回された。



「やっぱり、きて、くれた……」



安心したように、笑って。
するりと、腕から力が抜けた。



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