5
 

side.航



「航、電話ずっと鳴ってるよ?」



ベッドの上から気だるい声が届いた。
リビングから寝室に戻ると、携帯を投げ渡された。



「セフレ?航はほんと遊ぶよなー」



かく言うこいつもセフレで、けれど意に介した様子もなく、けらけらと笑っていた。
このくらいの軽さが丁度良い。

携帯のディスプレイに現れた名前は、竜也だった。
幼馴染とはいえ、ちょっとした対抗心のようなものを向けられていた竜也とは、少し距離があった。



(……めずらし)



止まることのないバイブ音に急かされて、電話を取った。



「んだよ」
『おまっ……今どこにいんだよ!』
「あ?知り合いの家だけど」
『っ……もう、ほんともう、ふざけんなよ……!』



怒気の孕んだ声に、ちょっと怖くなる。
竜也がこんなに怒りを表すのは初めてだった。



『奈津と約束してたんじゃねぇのか!』
「……あ」
『あ、じゃねぇよ!今何時だと思ってんだ!家に帰ってきてねぇって、満月先生から電話あったんだよ!』
「……は?」



時計を見ると、もう日付が変わろうとしていた。
まだ―――奈津は待ってる?



『俺、旅行行ってっから、その辺にいねぇんだよ……!どこにいるか知ってんだろ、』



竜也の言葉を待たずに、携帯をぶち切った。
ベッドの上からまた何やら聞こえるけれど、無視してバイクの鍵を取った。



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