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「返事っ、返事きた!いいって!」
『……まじかよ』
航からメールがかえってきて、思わず竜也に電話した。
恋人同士なのにこんなに喜ぶなんて、僕だっておかしいと思う。
けれどそれくらい、僕と航はデートというものをしていなかったから。
誘いは今まで無視されるか、断られていたから。
『お前な……それだけで喜ぶってどんだけなんだよ』
電話の向こうで、竜也が苦笑しているのがわかる。
それくらい僕の浮かれ具合はすごかったんだろう。
でも、嬉しかった。
航に会えるのが、嬉しかった。
日曜日、待ち合わせ場所に、約束の時間の三十分前に着いた。
駅前の広い公園だった。
噴水の前にあるベンチに座って、航のことを待った。
約束の時間から、三十分経った。
メールをしてみたけれど、返事はなかった。
電話は怖くて、出来なかった。
約束の時間から、二時間経った。
約束の時間から、四時間経った。
ぽつりぽつりと、雨が降ってきた。
約束の時間から、六時間経った。
辺りは暗くなっていた。
雨は、強さを増していた。
でも、『今日』はまだ、終わっていなかった。
携帯は一度も、メールを受信することはなかった。
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