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side.航
『日曜、出掛けない?』
珍しく奈津から来たメールに、一瞬固まった。
煙草を口にくわえたまま、しばし考える。
奈津は俺の幼馴染だ。
一年前に好きだと言われた。
最初は、奈津の勘違いだと思っていた。
身体の弱い奈津には俺か、竜也くらいしか友達がいなかったから。
俺だって、奈津を大切に思っていた。
可愛い弟のようにも、愛でたい対象にも、思っていた。
けれど、俺は、奈津の隣にいていいような男じゃない。
奈津の知らないところで、色んな人を傷つけた。
喧嘩だってしたし、遊び癖だって抜けなかった。
俺はふさわしくないと思った。
けれど他のやつの手に渡るのだけは許せなくて、奈津の告白を受けた。
その日のうちに身体を繋げた。
奈津は俺から言いださない限り、俺から離れていかない。
それでも、俺から言いだすことは出来なかった。
だったら奈津が早く、俺を嫌ってくれればいい。
そうやって、奈津と恋人同士になっても誰彼かまわず、遊び続けた。
『いいよ』
たまには遊んでも良いかもしれない。
たったそれだけの返信をすると、しばらくして、待ち合わせ場所と時間のメールがきた。
どうして奈津はいつまでも、俺に執着してくるのだろう。
ふわりと笑う奈津の顔は、いつまで経っても、俺の頭の中にあった。
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