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side.航



昼過ぎになって、満月先生ももう一度来て帰った頃、ぴくりと奈津の手が動いた。



「なつ……?」



問いかけると、ゆっくりと、その目が開いた。



「こ、う……?」
「っ……ごめん、ほんと、ごめんな、っ」
「……?な、で……こうが、あやまる、の……?」



小さな手を、もう離せなくなっていた。
離すと消えてしまいそうで、怖かった。

奈津は空いた手で、俺の頬に触れた。



「ちゃんと、きて、くれた、」
「馬鹿、俺のことなんて待つなよ、っ」
「あい、たかった」



ふわ、と奈津はそうやって、笑って俺を待ってくれる。



難しく考えるのは、もうやめようと思った。
奈津がそうやって、俺を求めてくれるから。
俺も奈津を受け止めて、求めようと思った。



気付くのは、ずっと、遅くなってしまったけれど。



「……好きだ」
「……うん」



知っていたよ、と言うような奈津の返事に、また泣きそうになった。



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