5
いい加減喉が渇いて、寝室を出た。
キッチンで水を飲んでいると、玄関に残された紙袋が目についた。
満月が帰宅して置いておいたものだった。
紙袋からは、花が覗いていた。
不自然に思えて開いてみると、小さな鉢がそこには入っていた。
花に紛れて入っているのは、メッセージカードだった。
『いつもありがとう』
リビングの時計を見た。
時間はもう、0時を過ぎて日付が変わっていた。
何度目かになる、俺と満月の記念日だった。
花屋に就職している友人。
満月は相談したに違いない。
そしてカードに、言葉に出来ない気持ちを添えて。
慌てて寝室に戻った。
満月は気を失ったままだった。
馬鹿なことをした。
頭だけでなく、背筋がぞっと冷えた。
放置したままの満月の身体を綺麗にして、服を着せた。
身体中に残った痕に、心がずきりと痛んだ。
嫌だと言えない満月を、無理矢理犯した。
身体で示す拒否を、力で抑えつけた。
満月の頬に残った涙の痕が、すべてを物語っていた。
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