5
side.綾
信じる。
信じたい。
涼が言っていること、直ちゃんと関わりがないということ。
それでも、疑う気持ちは晴れなくて。
そうして信じて、裏切られたから。
信じたくて、でも、裏切られるのが怖くて。
「………」
どうしていいかわからなくて、涼に会うと、恐怖で身体が動かなくなる。
「……おやすみ」
涼はぽつりとそう言って、俺の手を離した。
軽く頭を撫でて、寝室を出ていこうとして、
「……え……?」
久しぶりに出た声は、少しだけ掠れていた。
スローモーションのようなそれを、頭のなかで思い出す。
リビングに続くドアに手をかけて、少し開いた瞬間。
静かに、涼の身体が傾いだ。
次の瞬間には床に倒れていて。
ぴくりとも、動かなかった。
「………りょ……」
動かない。
倒れたまま。
涼は動かない。
「……や、っ……やあっ……!」
転びそうになりながら、涼に近づく。
身体を揺すっても、ぴくりとも動かなかった。
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