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綾は、俺が大学に行っている間に行動しているようだった。
食事もシャワーも、俺がいない間。
作り置きしているものには手をつけず、自分で適当に食べるか買ってくるか。
痩せてしまうには十分だった。
「綾、」
目を合わせようとしないのは変わらない。
それだけ俺を信じ、そして、裏切りを感じたのだろう。
「ごめん」
遠くを見ているような目。
ベッドにぼんやりと座る綾の手を、そっと握りしめた。
「あいつとは話した。でも、必要以上のことは話してない。お前を、傷つけるようなことも」
何度も言った事実。
しかし綾にとっては、そんなことはよかったのだ。
結局は、綾に黙って岡崎と関わった、その事実がいけなかった。
「俺はあいつと金輪際、何もないし、お前にも何もさせない」
言葉として理解できても、事実として信じられるのは、別の話だ。
「……俺のこと、信じられない?」
ぴく、と手が動くのはいつものこと。
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