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「なに、どうしたの」
「っ」



近付こうとすると、きっと睨まれて、思わず足が止まった。

初対面のときの牽制した態度とは違う。
明らかな怒り、苛立ち、嫌悪が滲み出ていた。



「でんわ、」
「は?」
「電話、したの、っ……直ちゃん、と」



そこでやっと、合点がいった。
同時に自分の迂闊さに頭が痛くなった。

通話履歴が残されたままだったのだ。

綾が持っていなかった間に残された、俺と綾の携帯の、短くはない通話履歴。
警察と電話をしたのは今日のこと、明らかに数日前の通話履歴に、疑問に思わないわけはない。

俺と長く話をする必要があり、それを綾に黙っておく必要があり、綾の携帯だとわかる人物は―――どう考えても、岡崎直しかいなかった。



「何で俺に黙ってたの、何話したの、ね、俺の、何を知ったの、何を教えられたの」



知られたく、なかった。
そう、小さく綾が呟いた。

事実として、綾が岡崎に何をされていたのかは知っていた。
けれど、綾は自分の知らないところで、俺と岡崎に繋がりが出来るのは嫌だったのだろう。
それほど、憎んでいる相手なのだから。



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