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「喉渇いて……飲む?」
おずおずと、白い布団に包まった綾が寝室から出てきた。
水の入ったペットボトルを手渡そうとして、
「……なに、泣いてんの」
「っ……」
俯いて、フローリングにぱたぱたと涙が落ちる。
屈んで目を合わせるようにして、片頬を指で、片頬を唇で、涙を拭った。
「どうした、」
「あ……」
「ん?」
涙は止まらない。
頬を蒸気させて、目に涙をいっぱい溜めて、綾は震えながら言葉を紡いだ。
「いなくなった、かと、思っ……」
「……馬鹿」
「う、うー……っ……」
泣きじゃくる綾を抱き締めて、落ち着かせるように背中を撫でた。
まだ、不安定みたいだ。
「おれ、馬鹿、だもん……」
「え」
「馬鹿だから、わかんな、からっ……いっしょ、いてよぉ……っ」
「……ん」
ひ弱な力で抱き締め返しながら、綾は泣き続けた。
最初とは、大違いな。
警戒心の強かった頃とは違う、甘えたがりな、弱いねこ。
本当はずっと、誰かにこうやって、甘えたかったんだろう。
そう思うと自分にその資格が与えられたような気がして、愛おしくなった。
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