5
side.綾
頭に霞みがかかって、まぶたが重くなった。
「なおちゃんこれ食べてー」
「好き嫌いしない」
「やーだー!」
柔らかい、空気。
いつも一緒。
「んっ……あ、!」
高い声。
聞きたくない、
聞きたく、ない、
「綾、かーわいい」
「黙れっつってんだろ!」
都築の、声?
助けて、
助けて都築……っ
「桜木、起きろ」
「っ……!」
揺すられて、目を覚ました。
都築の顔が目の前にあって、そっと、額を撫でられた。
「あっ、あ゛」
「うなされてた」
抱き起こされて、ぎゅう、と都築にしがみついた。
「都築、っ……」
「ん、」
優しい声。
都築の記憶で、全部、埋まればいいのに。
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