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『……安心しなよ、俺は旅行ついでに見かけただけだから』
「っ……」
『今更執着はしてないし。俺にも俺の事情があるからさ』



丸め込まれてる。
本当に、信じていいのか?



『……一緒に暮らしてる、とか?』



もう施設出る歳だろ、とやけに真剣なトーンで問い掛けられた。



「……あんたには、関係ない」
『ちゃんと飯食ってる?あいつ偏食だから、』



昔の桜木を、知っていたのだなぁと。
少しだけ、愛情、みたいなのが見えた。



『もし一緒住んでんなら、伝えて。……ごめんって』
「っ……!」
『携帯は交番にでも預けとく』
「待っ……」



電話を切る気配がして、咄嗟に止めた。



『……なに?』
「綾のこと、本当は、」
『……弟みたいに、思ってたよ』



ぷつ、と電話が切れた。
ドアの向こうで、桜木の泣く声が聞こえた。

本当は、大切だったのに。
どこで間違えたんだろう。

拳を握って、寝室へ向かった。



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