3
 

寝ている桜木を傍目に、リビングに出た。
折り返し電話をかける。

もしかしたら、誰か拾ってくれたのかもしれない。
桜木の携帯には、俺の番号しか登録してないから、



『もしもし?』
「……もしもし、」
『あんたが、ツヅキ?』
「そう、だけど」



言い方が突っ掛かる。
電話の向こうで相手が愉快に笑ったのがわかった。



『あんた、綾とどーゆー関係?』
「!」
『また綾遊ばれてんの?』



この、言い方。
綾を、知っている。



『綾は?』
「今は、ちょっと……あんた、もしかして」
『じゃ、伝えてくれる?岡崎直……って言えばわかると思うよ』



―――こいつが、



「て、めっ……!」
『もしかして、俺のこと知ってんの?』
「お前が、綾を……っ」



こんなに他人に怒りを覚えたのは、初めてだった。



『まさか偶然会うなんてね』
「……黙れよ」
『相変わらず、可愛い顔してんね』
「黙れっつってんだろ!」



わざと挑発してきてるのは、頭の片隅でわかった。
わかって、黙ってられなかった。



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