5
 

「っ……もっと、」
「え」
「もっかいっ……やだ、都築、っ」
「………」



どうしたことか。
混乱している桜木を落ち着かせる意味もこめて、気が済むまでキスしてやった。



「っん、」
「落ち着いた?」
「ん……」



床に座ったままだったから、抱えて二人ベッドに座った。
甘えるように全体重を預けてきて、俺は背中を撫で擦った。



「都築、は……裏切ら、ない……?」
「え?」
「俺、信じて、いい?……急に変になって、笑って、無理矢理……っせっくすとか、してきて、殴ったり、煙草をっ」

「綾!」



また泣き出しそうな桜木を、掻き抱いた。



「しねぇよ、んなこと……」
「……う、ん」



いつも、そこらの同世代のやつらみたいで。
普通に笑って、普通に過ごしていたから、うっかり忘れそうになる。

桜木の、過去。
急にこんなになるまで、きっと俺が聞いていた以上のことを、されていたはず。
胸が、痛い。



「何が、あった……?話せるなら、」
「っ……うん」



俺は、違う。
傷付けたりしない。

そういう意思を込めて、頭を撫でてやった。
桜木はそっと、口を開いた。



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