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桜木に何があったんだろう。
ベッドに寝かせて、俺はソファに座って息をついた。

誰かに襲われた、にしては外傷はない。
途中で転んだであろう膝と、自分で引っ掻いたらしき鎖骨は、手当てはした。

……わからない。



「ああぁ――っ!」
「!」



寝室から、今まで聞いたことがないような、桜木の叫び声が聞こえた。
咄嗟にドアをあけると、ベッドから落ちたように床に座って、泣き叫んでいた。



「あ、ぁっ、」
「大丈夫。大丈夫、だから」
「あぁ、っ……つ、づき……っ」
「ん、俺。落ち着くまで、ここいるから」



小さな身体を抱き締めて、背中を擦った。
縋りつくようにシャツを握り締められて、胸が、痛くなった。
どれだけの恐怖が桜木を襲ったのか、想像もつかない。



「都築っ、おい、て、かなっ……で」
「……?置いていかねぇよ」
「いな、からっ……こわ、くて、」
「あー……ごめんな」



桜木の顔を上げさせて、止まらない涙を拭ってやった。
捨てられた子猫みたいな、心細そうな目で、こっちを見上げてくる。
思わず、唇を重ねた。



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