3
 

side.綾



「っ……」



目を覚ますと、消毒液の匂いがした。
引きつった感覚に下を見ると、鎖骨や膝に、ガーゼがあてられていた。

匂いが強いのは、鎖骨が近いから。
都築の匂いを、消すみたいに。

都築のベッド。
都築の家。
都築は、いない。

なおちゃんが、迎えに、



「い、いやっ……や……っ」



頭を抱えても、泣いても喚いても、なおちゃんは消えない。



『綾は、ずっとこうやって生きていくんだろうな』



触らないでほしかった。
抱かないでほしかった。
仲のいい、お兄ちゃんみたいな、存在だったのに、

―――俺は、裏切りを知った



「っ……あ、ああぁ――っ!」



たすけて、都築。
どこにいるの、
俺を、置いていったの、

もつれる足で、ベッドから這い出た。
痛む膝を無視して、床に身体を引きずらせるように歩く。
けれど力が入らなくて、立つのもままならない。



「あーっ、あ、っ……」



リビングへと続くドアまで、手は、届かない。



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