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「疲れた……」
「……ん……」
「………はぁ」
帰り道、背中にのしかかるのは桜木の重さ。
食べるもの食べて、花火も堪能した桜木は、そのまま屋上で寝てしまった。
初めての祭りと花火を、楽しんでくれたのは良かったと思った。
だから、心なしか幸せそうな表情の桜木を起こすのも躊躇われてしまった。
(………なんで、かぁ)
なんでだろう。
好きと言うには、桜木にその言葉は重すぎる。
欲と言うのも、また違う。
軽く扱えないから、簡単な言葉がでない。
庇護欲?それも違う。
「よっ……」
落ちてきた桜木の身体を背負いなおすと、ぎゅうっとしがみつく腕の力が強くなった。
きっと、こういうとこ。
(………そっか)
傍にいてやりたい。
大切にしたい。
安心させたい。
笑わせてあげたい。
―――「都築、だから」
「俺」が良いと言って、
「俺」を求めて、
「俺」の隣にいる。
愛おしい、存在。
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