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「う………」



すぐに返事をしないところを見ると、あんまり乗り気じゃないようだ。
さっきのこともあるし、そもそも人が多いところは得意じゃないはず。
家からここまで距離もある、疲れてもいるだろう。



「………わ……」



何と言おうか考えていたら、花火があがった。
裏道のここじゃ、音はまだしも花火の端々しか見えない。



「……ここ、昇れるんじゃね」



古びたビルの、非常用の外階段。
音を立てないように昇ると、屋上に着いた。



「わっ……きれー」



桜木が、さっきの泣きじゃくった顔が想像つかないくらい、目を輝かせた。

晴れた夜空に、大きな花が咲いた。
不法侵入じゃないかとひやひやしながらも、すごい穴場を見つけたなと思う。
有名な花火大会らしいが、こんなによく見たのは初めてだった。



「俺、打ち上げ花火見たの初めてだ」
「………まじ?」
「祭りとかも……あんま、来たことない、」



段々と声のトーンが下がる。
小さな肩が、頼りなかった。



「……ちょっと待ってろ」
「え」
「絶対こっから動くなよ。……もし誰か来たら、隠れろ」



ぽかんとした桜木をおいて、階段を降りた。



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