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この人混みで人一人探すのは、さすがに厳しい。
けれどコンビニを見て回って桜木の姿がなかったのを見ると、やはりこの中。
今まで外に出たことがない余所者だ、携帯もなく、ここらへんの地図がわかるわけもない。
「あの馬鹿……」
歩行者天国になった大通りのど真ん中を歩いているわけないだろう。
一人にせよ、面倒に巻き込まれてるにせよ、道の端か建物の間が妥当。
しらみ潰しに見渡して、
「離せっ……」
「わ、女みてぇ」
人が避けて通るそこには、男に囲まれた都築。
身体を撫でるように触られて、涙目なのがわかる。
「……おい」
「?……なに、お前」
「俺の連れにちょっかい出さないでくれる」
喧嘩はぶっちゃけ、あんまりしたことはない。
けれど俺のが背が高かったからか、相手が一瞬警戒した間に、桜木の腕を取って逃げた。
怒らせる要素もなかったし、相手が追ってくる様子もなかった。
人がいない裏道に連れ込んで、荒い息を整えた。
家からここらに来るまで、ほぼ走りっぱなし。
「おまえ、なあっ」
勢いよく、壁に寄りかかる桜木の横に手をついた。
涙をいっぱい溜めた目が、驚いて見開かれた
「なに勝手にほっつき歩いてんだよ!警戒心なさすぎ!」
「っ……」
「大体なぁ、俺が来なかったらっ……」
はっとした。
桜木の大きな目から、ぽろ、と涙がこぼれた。
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