3
side.綾
「っ……ごめんなさい、……わわ、っ」
人にぶつかってばっかだ。
道を聞きたくても、問うことすらできない。
都築の家の住所も、地名すら知らない。
夜になるにつれて、騒がしさが増した。
屋台が並んで、美味しそうな匂いが鼻腔を擽る。
楽しそうな雰囲気と、近づく、夜。
……都築、もう帰ってきてるかな。
心配してるかな、いや、してないかな。
……俺、帰れんのかな。
「……う」
泣きたくなってきた。
真っ暗闇に、放り出されたような気持ちだった。
誰も、何も、知らない。
俺が知ってるのは、都築だけだったから。
もう人にぶつからないように、道の端に寄った。
歩き疲れて、シャッターの閉まったお店の前で、ずるずると座り込んだ。
「………都築ぃ……」
どうやったら、帰れんだろ。
はぁ、と溜息を吐いたところで、足元に影が近付くのが見えた。
「つっ……」
「……あれ、男じゃん?」
「え、まじ」
「可愛い顔してんね、一緒遊ぼうぜ」
チャラチャラした感じの男が、三人。
腕をひかれて、無理矢理立ち上がらされた。
くっそ、酒くさい。
柄が悪いのは明らかで、通る人は知らんぷりしてる。
「離せっ……」
「わ、女みてぇ」
「ひ、っ……」
するりと、腰を撫でられた。
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