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「……あれ」
大学から帰ると、沈黙が迎えてくれた。
いつもの桜木の姿はない。
どこふらついてんだ。
コンビニにでも行ってるんだろうと、適当に雑誌を読みながら過ごす。
「………遅い」
最寄りのコンビニまでは、そうかからない。
一冊雑誌を読み終えて外を見ると、段々と暗くなってきた。
いつもと違う外の騒めきにベランダから見下ろすと、人の集団。
「………あー」
確か、毎年恒例のでかい花火大会。
大通りを歩いて向こうに川があり、橋に出店が並ぶのはいつもの光景。
花火、見に行ったのか。
黙って一人で行くか、普通。
……また誰かに、とか。
無防備というか、警戒心がないというか。
同じ男でも、かなり綺麗な顔してると思える。
それなりにしていれば、女にも見間違えるような。
さすがに言えはしなかったけど、桜木が今まで色んな奴に狙われたのは、その綺麗さも理由の一つだろう。
なんにせよ、これだけ長く帰ってこないとなると、心配ではある。
携帯くらい持たせりゃ良かったと舌打ちして、煙草を灰皿に押し付けた。
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