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side.綾
俺は、都築の家に居候(?)することになった。
けれど、住まわせてもらうだけじゃ申し訳ない。
多少の貯金はあったけど、使えば減ってしまうもの。
俺は都築が大学に行っている間、こっそりバイトを探すことにした。
こっそりなのは、言えば、そんなことしなくていいと言われそうだから。
でも、何から何まで世話になるわけにはいかない。
他人(特に男)は苦手だけれど、そんなことばっか言ってちゃ、生きていけない。
「………んー」
まずは、土地勘。
施設から逃げるように出た俺は、この遠い地までやってきた。
やってきて早々、都築に保護されたもんだから、外はほとんど出たことがない。
土地を知らないとバイト先も決められない、散歩のようにぐるぐる回った。
程よい都会、と言ったくらいだろうか。
都築の家の近くには大通りがあり、ある程度の店が揃ってる。
(……人、多いなあ……)
いつもこんな感じなんだろうか。
夕方の6時過ぎだ、夏でまだ明るいにしろ、人は減るどころか増えている。
一様に同じ所に向かっていて、浴衣姿も見える。
(お祭り……?)
これ以上人が増えたら適わない。
引き返そうとして、
「………ここ、」
人の波に押されてふらふら。
俺がいるのは、どこ?
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