1
 

side.綾



俺は、都築の家に居候(?)することになった。

けれど、住まわせてもらうだけじゃ申し訳ない。
多少の貯金はあったけど、使えば減ってしまうもの。
俺は都築が大学に行っている間、こっそりバイトを探すことにした。
こっそりなのは、言えば、そんなことしなくていいと言われそうだから。
でも、何から何まで世話になるわけにはいかない。
他人(特に男)は苦手だけれど、そんなことばっか言ってちゃ、生きていけない。



「………んー」



まずは、土地勘。
施設から逃げるように出た俺は、この遠い地までやってきた。
やってきて早々、都築に保護されたもんだから、外はほとんど出たことがない。
土地を知らないとバイト先も決められない、散歩のようにぐるぐる回った。

程よい都会、と言ったくらいだろうか。
都築の家の近くには大通りがあり、ある程度の店が揃ってる。



(……人、多いなあ……)



いつもこんな感じなんだろうか。
夕方の6時過ぎだ、夏でまだ明るいにしろ、人は減るどころか増えている。
一様に同じ所に向かっていて、浴衣姿も見える。



(お祭り……?)



これ以上人が増えたら適わない。
引き返そうとして、



「………ここ、」



人の波に押されてふらふら。
俺がいるのは、どこ?



前へ top 次へ

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -