5
 

水の中にいる、夢を見た。

そこは海のように広く、暗かった。
どこまでも続く水の世界は、終わりが見えなかった。

次第に息が苦しくなって、酸素を求めてもがいた。
けれど空は一向に見えなかった。



僕は水の中に沈んでいった。



「っ!」
「……奈津?」



落ちる感覚がして、目が覚めた。
一瞬どこにいるかわからなくて、覗きこんできた航に驚いた。



「起きた?気分どう?」
「……こわ、かった」



自分の声は、情けなく掠れていた。
慌てて隣に寝転ぶ航に抱きついた。



「奈津?」
「こ、こわ、かった、誰もいなかった、航も、どこにもいなかったの」
「怖い夢を見た?」



僕にとって一番恐ろしいのは、航がいなくなること。
このぬくもりが、無くなってしまうこと。



「大丈夫だよ。俺は、奈津の傍にいるよ」
「っ、」
「ずっと傍にいる。一人になんてしない。だから、泣かないで」



水の中は、とっても苦しい。
けれど航は、『酸素』をくれるから。



「ん、」



君がいなくちゃ、死んでしまうのだ。



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