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「咲、帰ろ」



花のことを理解してから、僕は誰とも関わらなくなった。
知っている人に花が咲くことは、辛かった。

けれど、陽だけは違った。
一人で教室の隅に座る僕に話しかけた。

氷を溶かしていくように、僕は、陽に心を開いた。



開いて、しまった。



「明日から夏休みかー」



帰り道、陽は背伸びをしながら呟いた。
僕は黙ってこくりと頷いた。

陽は背伸びをした手を、そっと下ろして。
僕の手に触れて、一瞬離れたと思うと、きゅっと握りしめてきた。

僕が驚いて隣を見上げると、



「ふふ」



陽は、幸せそうに笑うのだった。

頭一つ分背の高い陽は、僕にとって、太陽のような存在だった。
気付いたころにはもう、陽がいなければ駄目になっていた。



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