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僕は昔から、「花」を見た。



すれ違う人に、「花」を見た。
胸のあたりにふわりと一輪咲く花は、持つ者と持たざる者といた。

持つ者の花は、段々と枯れた。
枯れた途端、持つ者は死んだ。

その花は心臓に咲くのだと識った。
花が咲いた者は、近々死ぬのだと識った。



そしてこの花は、僕以外には見えないのだと、識った。



いつだって置いてけぼりだった。

よく公園で犬の散歩をしているおばあちゃん、遠縁の親戚、隣のクラスの子、あのお店のおじさん。
花は咲いて、枯れて、死んだ。

識っても何も言えなかった。
死の宣告は言ったところで、何も変わらなかった。



僕はいつだって識っていたし、だからこそ、置いてけぼりになった。

死んでいく運命を、識っていたのに、何も言えずに黙って見守った。
それは、痛いことだった。



一人の孤独だった。
孤独だけ残して、みんな、死んでいった。



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