5
ひとしきり泣いて落ち着いたようで、目を赤くした瑠依の手当てをした。
瑠依は大人しく着替え、右手を取る俺をじっと見つめていた。
「っ」
「……我慢して」
痛むのだろう、息を飲むのがわかるけれど、どうにも出来ない。
細い手だった。
「ヒビ入ってるかもね。熱も持ってるし、後で救護室に行った方がいいよ」
瑠依は大人しく、こくりと頷いた。
こう素直だと、調子が狂う。
初対面のときの態度とは、随分違う。
「……すごい手だね」
テーピングを巻き直してやり、改めて思う。
「……汚いでしょう」
感情の籠っていない声だった。
手、以外の身体に対してもそう言っているのだと、暗にわかった。
「なっ……」
気付いたら、その手にキスしていた。
「……あれ?」
「な、何してるんですか」
自分の行動より、動揺しているような瑠依の声が面白かった。
少し頬が赤くなった、恥ずかしがっている顔が、愛おしかった。
「おもしろーい」
「なっ……あなた、がっ」
「瑠依」
「っ!」
もう少し、このこの相棒でいてやろうと思う。
「これから、宜しくね」
「……はい」
「蓮」
初めて呼ばれた名前は、心なしか柔らかな響きを持っていた。
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