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そのまま会社の住居スペースになっているマンションに戻った。
基本的に社員はこのマンションに住んでいる。
チームは互いの部屋の行き来が出来るため、合鍵を使って瑠依の部屋に入った。
その人となりが表れているように、殺風景な部屋だった。

会社の救護班は、全体で現場に行っている。
この程度の怪我ならば、応急処置できる知識くらいはあった。



(……さて)



ベッドの上に座る瑠依を見つめる。

現場から帰ってきたまま、汚れた衣服を着ている。
銃を蹴飛ばされたときに怪我したのだろう、右手首は赤黒くなっていた。
ガタガタと震えながら、破けた衣服の胸元を掴んでいた。
右手首は痛むのか、ベッドに投げ出されている。
もしかしたら折れているのかもしれない。
綺麗な頬にも痣が出来ている。

手当をしてやりたい、が。



「っ……!」



少しでも近付くと、びくっと怯えられる。
現場慣れしていないとは言え、ここまで怯えるものなのか……?



「……いい加減にしなよ」



待ってやる義理はない。
ここで大人しく手当てを受け、現場に復帰してくれなければ、チームである俺にも痛手になる。
恐怖とかそんなもん知るか、と思いながら、強引に瑠依のシャツを掴んだ。



「まずは着換えて」
「っ!ゃ、っ……!」



ばた、と暴れられるけれど、構わずシャツを剥いだ。
小柄な瑠依の力と比べるなら、俺の方が優に上だ。



「………?」



ぴた、と手を止めてしまう。
むき出しになった細い上半身、鎖骨のところには、煙草を押しつけられたような痕があった。

いつの間にか、瑠依は抵抗していないことに気付いた。
暴れないようにと、片手で一纏めにした瑠依の両手は、小刻みに震えていた。



「ご……ごめ、なさい、ごめんなさい、ごめんなさい……っ」



焦点の合わない目で、ただ小さく、そう呟いていた。

魅力的な容姿。
妙に身体に纏っていた色気。
敵に覆い被さられた瞬間の恐怖。
鎖骨の傷。
謝罪。

言わずとも、過去にその身体に何を刻まれていたのか、理解した。
花街向きだと言った過去の自分を殴りたくなった。



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