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殺し屋が当たり前になった今は、街中で抗争が起きることも珍しくない。
初陣は、わりと大きめな抗争の戦闘員だった。

街中に溢れる廃墟に紛れて、相手が動くのが分かる。
こちらにも味方が何人かいるが、配置が悪い、相手の方が優勢だ。
距離をつめられたらおしまいだと思ったとき、隣で瑠依が銃を放つ。

百発百中。
綺麗な顔を淡々と敵に向け、心を置いてきたような人形は、人を殺す。



(……すご)



後輩だけれど、そう思ってしまった。
同時に、何か感じる。

何かに対する、憎しみのようなもの。



こちらも形勢をたて直し、あと一歩のところだった。



「っ……」
「!」



いつも右隣にあった影が、揺れた。

迂闊だった。
死角から敵が現れて、小柄な瑠依に襲いかかったのだ。
相手は銃を持っていなかったが、手元に大ぶりなナイフがあった。
瑠依の銃は、最初に蹴飛ばされて手を離れていた。



「ぐっ」



鈍い音がして、頬を殴られた瑠依が吹っ飛んだ。
敵が瑠依に覆いかぶさって、喉元にナイフを突き立てようとする。
逃げればいいのに、瑠依は怯えたように、動かなくなった。



(ちょっ)



やばい、と瑠依の救出を最優先する。
敵は完全に俺に気付いていなかったのか、横からの蹴りで吹っ飛んでしまう。



「何やってんの、ひとまず抜けるよ!」



傷の手当てをして形勢をたて直そうと考えて、倒れたままの瑠依の手を引くけれど、



「……え?」



瑠依は返事をしなかった。
ガタガタと震えて、大きな目をもっと見開かせて、虚空を見つめている。
はぁ、はぁ、と浅い息をしていた。



(……しょうがない)



恐怖に身体が竦んだんだろう。
新人にはよく有りがちなことだ。

仕方無く、瑠依を肩に担いでその場を離れた。
思った通り、軽かった。

人間らしいところが見えて、少しだけ、ほっとした。




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