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「えっ?俺ですか」
文句を言ったら上司に蹴られた。
今の時代、殺し屋の商売は人気だ。
危険は伴うが、勤務時間に対して収入が良い。
金に釣られるように俺も入社した。
仕事は基本的に二人一組でやる。
殺し屋を初めて数年、中堅くらいに成長したところで、先輩が抜けた。
新しく俺の相棒になるのは、新人。
その新人と言うのが厄介だった。
(……よりにもよって)
上司からの配属命令を聞いたあと、フロアに戻ってデスクに座った。
隣をちらりと見ると、頭一つ分はゆうに低い、華奢な男が座っている。
最近入ってきた新人で、射撃の腕はいいが、変わり者。
俺の相棒になるらしい。
曰く、あまり周りと慣れ合おうとしない。
とっつきにくさとは違う、周りを近づけさせない意志を感じる。
名前を、瑠依と言った。
「……ていうか、何でこんなとこ入ったの。金が欲しいなら花街が手っ取り早いんじゃない、その顔じゃ」
やけに整った横顔を見ながら、わざと嫌みったらしく言ってやる。
まだ子どものくせに、妙な色気もある。
しかもこのこ、一度も俺を顔を合わせない。
「……うるさい」
低すぎず高すぎない、ちょっとハスキーな声がして、どきりとした。
……あくまで先輩に対して、うるさいとか言いやがった。
絶対合わない、やっていける自信がない。
「そ」
話すだけ無駄だと思い、手元の資料を見つめた。
「……わ、君、射撃テストダントツ一位なの」
「………」
腕はいいと聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。
瑠依は何も言わず、デスクに向かって書類を書いていた。
真っ白な細い腕の先、小さな手には包帯やテーピングでいっぱいだった。
少しだけ、意外に思った。
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