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(……あ、また来た)



今日で一週間だった。
本当はもっと前からかもしれない。

アルバイトでお菓子屋のキッチンで働いていた俺は、ちらりと店頭を覗いた時に、ショーケースに寄るある人物を見かけたのだった。
キッチンから街路に面するテイクアウト用のショーケースは見えにくい。
その日見かけたのは偶然で。

全体的に色素が薄い。
小柄なのか、少し大きめの紺のダッフルコートをいつも着ている。
くりくりとした大きな目が、ショーケースの中のケーキを見つめていて。
そうして見つめるだけで、帰っていくのだった。

年末も近い寒い時期に、毎日同じ夕方5時に覗きに来る。
白い息を吐きながら、幸せそうにケーキを見つめるのだった。

覚えてしまうのには時間がかからなかった。



(なんで買わねぇのかな)



考えても答えは出ない。

名前はおろか、性別さえ疑わしい人。
人影のなくなったショーケースから意識を戻して、再び作業に入った。



もうすぐ、クリスマス。



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