7
「ど、して」
「……お前の匂いは強すぎる。無理にでも意識しないと、いつ理性が飛んで血を吸おうとするかわからない」
先輩は抱き込んでいた僕を、そっとベッドに戻した。
「もう、こんなことはしないから」
どうして、そんなに悲しそうな顔をするんだろう。
「ぼ、くが……」
「ん?」
「僕が、動けるようになったら」
―――また、図書館に来てくれますか?
「……もう、行かない」
「………へ、返却がまだです」
「え?」
「今日、返せなかった、本」
僕は図書委員だ。
真面目な真面目な図書委員。
誰よりも真面目に当番を続けて。
当番日外でも図書館に通っていて。
利用者の少ない図書館に毎日やってくる先輩を、知らないわけがなかった。
「本の、返却日……あと、一週間、あります」
「………」
「僕は、図書委員、なので……返却に、来てもらわなければ、困ります……」
僕が当番をしている、放課後に。
「それでも、もう、来ませんか……?」
「……面白いやつだな」
「真面目なだけです、」
「……わかった、負けた」
「!」
ふわりと顔が近付いて、唇が重なった。
「っ」
小さく唇の端を噛まれて、滲んだ血を舐められる。
「……痛い」
「だから、言っただろう?」
それでも、そうやって笑う先輩に、近付きたいと思った。
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