5
 

「………!」



ざわ、と空気が変わる。



「俺は、吸血鬼だ」



ちらりと見えた歯は、鋭く尖ったそれ。



「きゅ、けつ、き……?」
「詳しく言えば、人間と吸血鬼のハーフ。父が吸血鬼だ」
「はーふ……」



話についていけない。
吸血鬼なんて、伝説のものだと思っていた。

けれど、右肩の痛みは、あの出来事は、本物だ。



「純吸血鬼のように、血であれば何でも吸えるわけじゃないし、毎日なくても困らない」
「ぼ、僕の、血、吸っ……」
「全く吸わずに生きていけるわけじゃない。俺はしばらく吸っていなかったし、吸いたいと思える『血』に、出会えてなかった」



一度深く目が閉じられて、次に開くと、もとの目に戻っていた。



「半吸血鬼でも吸える『血』……極上な血の匂いが、お前からした」
「僕……?」
「それで、我慢が出来なくなった」



すっ、と右肩に触れられて、思わずびくりと震えてしまった。


「痛かったか……?純吸血鬼と違って、痛覚を遮断させる力が弱いから」
「………先輩、は」
「ん?」
「血を吸わないと、死んじゃう、ですか」



しばらく吸っていないと言った。
吸える血は限られると言った。

吸える血を吸わなければ、先輩は死んでしまう?



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