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「っ……悪い、嫌だった、か……?」



僕と先輩は今まで一度もキスなんてしたことがない。
帰り道に手を繋ぐ程度だった。

付き合っているならしてもおかしくない、でも、僕は出来なくて。

先輩が心配そうに僕を見ているのがわかった。
嫌われた、かも、知れない。



「ごめ、なさ……」
「いや、いい。驚かせた」



先輩は優しく笑うけれど、本心は何を思っているかわからない。
拒否する恋人なんて、いらないかもしれない。
僕なんて、必要ないなんて、



「なっ……なに、泣いてる」
「う、ぇっ……ごめ、なさ、僕っ……」
「そんなに嫌だったのか、悪かった、泣くな、」
「ちが、嫌じゃ、なっ……僕、先輩と、したいのに、っ」
「え」



頭の中、ぐちゃぐちゃだ。



「もっと、近くにいたいの、にっ……せんぱ、美味しい、匂い、する、からっ……」

「美味しい匂い?」



しまった。

びくっと身体が跳ねた。



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