3
「ああああ、あの、あの」
「緊張してるのか?」
先輩はふっ、と笑って、飲み物を持ってくると言い残し、僕を部屋に案内してリビングに降りてしまった。
緊張してない、わけがない。
この部屋は先輩の匂いが強すぎる。
密室。
二人。
血。
目の前の極上の血に、くらくらするようだった。
先輩が戻ってきて、ベッドを背に二人座ってお茶を飲んだ。
少し落ちついて、小さく息を吐くと、また笑った気配がした。
「お前は可愛いな」
「っ……」
ふ、と顔の上に影が落ちてくる。
先輩の顔が近付いてきて。
キス、されると思って。
匂いが強くて。
首が近付いていて。
僕の中の獣が、ぐるると唸った。
「やっ……!」
気付いたら、先輩を突き飛ばしていた。
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