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吸血鬼と言っても、毎日血を吸って生きているわけではない。
母が吸血鬼で、父は人間、所謂ハーフなのだ。
吸血鬼の血が薄い上、時代に沿うように進化を続けてきた吸血鬼たちは、現代においてはそう血を欲しなくなっていた。
けれど、全くなくて大丈夫なわけじゃない。
限られた『血』を求めるようになった。
その『血』は、『好き』に反応する。
「……今日はうちに来るか?」
「えっ……」
付き合い始めて一ヶ月。
先輩の部屋への訪問は、まだ出来ていなかった。
遅いとも言えるけれど、それは僕が拒んでいるから。
僕は、先輩が好きだ。
好きだから、先輩の『血』が吸いたいと思う。
先輩の匂いが、僕を誘う。
「あの、でも」
「来い」
「えっ……」
今日の先輩は強引だった。
当然だ、今まで拒み続けていたのだから。
拒否する言い訳も既に思いつかず、あれよあれよと連れて行かれた。
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