6
初めて見た、颯太の涙。
無意識に頬に手を伸ばすと、きゅっと、その手を掴まれた。
そっと、手の甲にキスを落としてくれた。
「俺……」
颯太の声が、震えてた。
震える手が、ゆっくりと、俺のお腹に触れて。
「お前と、家族になれんの……?」
そこにあるのは、温かくて優しい笑顔で。
「……俺、は」
どうして、笑ってくれるの?
「家族を、知らない。むしろ、捨てたやつらを、憎んでる。でも、だから、俺は……」
颯太はそっと、俺を抱きしめてくれた。
俺と、お腹の、この子を。
「伊央と、こいつと、新しい家族になりたい」
「……うん」
この日、俺達は、家族になった。
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