5
「お前さぁ……」
いつもと違う颯太の声。
低くて、怖い。
怒ってる。
「俺に何か、言うことあるんじゃねーの」
「っ……!」
言わなくちゃ。
もう、颯太は、知ってしまった。
「に、んしん……した」
「………!」
「颯太と、俺、のっ……」
抱きしめられていた腕の力が、抜けた。
颯太は、俺を嫌ってしまった……?
「ごめ、俺、おろす、ごめん、嫌わないでっ……」
顔が上げられなかった。
颯太が憎む『家族』になってしまった、俺。
俺の中にいる、颯太との『家族』。
颯太はきっと、俺を許さない。
「そうっ……」
無言が続いて、思い切って顔を上げた。
「な……んで……?」
颯太はきっと、俺を―――。
「なんで、泣いてるの……?」
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