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side.千夏
ゆうじが、はなれていって。
ぼくのことが、きらいになって。
あぁ。
売られるんだなと、おもった。
「ごめんね、もう、怖くないからね……」
わな、だと思った。
ぼくがそうして泣き止んだら、また一人にするんだ。
そうして、くりかえす。
けれど、ゆうじはちがった。
「いらないこじゃない。俺には千夏が、必要なんだから」
ぼくは、信じたくなる。
信じて、しまう。
ウソでもいいと、思ってしまう。
いま、ゆうじがそばにいてくれるなら。
今だけでも、『あいしてる』してほしいから。
「ぼ、ぼく、いいこ、する」
「千夏はもう充分、」
「だから、いて、ここ……行かな、で」
ずっと、『あいしてる』して。
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